俺がまだ若いころ、今と違って飛田新地もひっそりと営業していた。
最初に『みどりちゃん』に会ったのは、たしか真夏の陽が少し傾きだしてはいたが、まだ明るい夕暮れだった。
青春通りからメイン通りを一巡し、妖怪通りを夕涼みがてら歩いていて、いったん通りすごし、気になってまた後戻りしたとおもう。
やり手バアサンが、「兄ちゃんちょっと見て、最近入った子や。エエ子やで」と声を掛けた。
オレンジ色のタンクトップからはみ出した、巨乳で丸顔ぽっちゃりの陽に焼けた肌が健康そうな子が座っていた。
近づいてみると若いが素朴で人柄のよさそうな子だったので、吸い込まれるように、上がってしまった。
美形でスタイルのいい子は、青春通りやメイン通りにいる集中しているが、若くてもそれに当てはまらない子は、裏通りにいるので、穴場といえる。しかも少し安い。
上がっても最初の印象のママだったのが、嬉しかった。登楼すると態度がコロッと変わる地雷姫もいるのだ。
飛田はチョンの間なので、サッサと事を済ませなくてはならない。恥ずかしいのか部屋は少し暗くされた。さっそく脱いだ。
年齢は23歳という。「おっぱい大きいね」「日に焼けて黒くなってしまって」など少し会話を交わしたあと、俺好みの太めの巨乳ちゃんなので、張り切って突入しようとした。
しかし、半分まで挿入すると、痛がりだした。俺の道具は、標準なので問題はない。何回か試みたが途中までしか入らず、あきらめた。
時間まで横になりながら、どんな客がいるのか聞いてみた。目の前に大きな乳房があった。
学校の校長先生がいて、上がっても話だけで何もしないで帰るという。自分の娘のように思っているのかもしれない。
こんな事があったのに、懲りずに何週間かして、また登楼した。外には、別の子が座っていたが、やりてバアサンに「みどりちゃん、いる?」と聞くと中にいたので呼んでくれた。
今日こそは大丈夫だろうと挑んでみたが、やはり奥まで入れるのはムリだった。股間をおおう黒々とした恥毛が印象的だった。
ふと見るとみどりちゃんが、丸顔に涙を浮かべていて「医者に診てもらったら、わたし膣が狭いといわれた」と悲しそうにいった。
今度は外で逢いたいというと、「ここに来て会って」とあっさりかわされた。そして「キスをして」といったので、時間がくるまで抱擁していた。
忘れられず夏の終わりに、また飛田を訪れた。
想像したように、みどりちゃんは居なかった。
念のために、やり手バアサンに声を掛けると、「みどりちゃんは、もう辞めたで」と予想通りのつれない返事が返ってきた。
こにあと他の店に移ってないかと、しばらく探してみたがやはり見つからなかった。
やるせない喪失感を残し、俺の短い夏の恋は終わった。