飛田新地と同じく、当時よく通っていたのが、西九条にある松島新地だ。
当時の松島新地は、人通りもまばらでひっそりとしていた。何十年も前のことである。
当時から俺はぽっちゃり好きだったので、痩せ型で好みのタイプでもなかったのに、なぜか上がってしまった。
多分歩き疲れたのか、安かったのか、あるいはその両方の理由かも知れない。
彼女は30歳は少し超えていたか、痩せていたので少し老けて見えたかもしれない。
骨盤が浮き出ているようなスレンダーで枯れ木を抱いている感覚だった。
しかし印象に残っているのは、浮き世ばなれした非現実感だった。
カンガルーが好きで、オーストラリアに行くために語学を勉強しているという。にわかに信じがたい気がしたが、そのうち、目の前の姫がカンガルーに見えてきた。目のあたりが似ていたかもしれない。
その後また松島を歩いていると、あまり客がつかないのか、いつ通ってもいたので、また上がってみた。
安かったのも理由のひとつだ。予算が乏しいときは、安いので妥協してしまう。気になったのは、いつも酔っぱらっていることだった。
それから、しばらくしてまたその店の前を通ると、彼女はいなかった。
もっと年輩の姫がいて、彼女のことを聞き出そうと上がってみた。こちらも格安だったような記憶がある。
疲れるから横がいいというので、お互いに横になって行為をした。これで、どれくらい歳か分かるというもの。
膣の中は広く、なんだか、なま暖かいコンニャクの中にムスコを遊ばしているようだった。
こんな経験ははじめてだった。
事がすんで、カンガルー姫の事を聞いてみた。
「あの子とやったんか?」「ガリガリに痩せてたやろ」「ほとんど何も食べずに酒ばっかし飲んでたんや」
この時いつも酔っていたのを思い出した。
「ちょっと前に、昼間、どっかの飲み屋で客をとって、連れ込み旅館で死んでしもたんや」「男の人もビックリしたやろなあ…」
「カンガルーが好きで、オーストラリアに行きたいて、言うてたで」と俺。
「。。。」
「あれ、嘘やったんか」
「さあ、よう分からへんわ」
なんだか、狐につままれたような、白昼夢を見ているような感じで、その店をあとにした。